虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)とは

冠動脈イメージ

心臓は1日に約10万回も拍動し、全身に血液を送り出しています。
心臓が動き続けるためには酸素や栄養が必要で、それを運ぶのが「冠動脈(かんどうみゃく)」です。

「虚血性心疾患」とは、この冠動脈が動脈硬化や血栓で狭くなったり詰まることで、心筋に十分な血液が届かなくなる病気です。
主に「狭心症」と「心筋梗塞」があります。

「狭心症」は、冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、心筋への血流が一時的に不足する病気です。
特に坂道や階段を上るなど、心臓に負担がかかった時に心筋が酸素不足に陥り、症状が現れやすくなります。
典型的な症状は運動時に胸の圧迫感や痛みが出て、数分から15分程度で治まるのが特徴です。
頻度が増えたり、安静時にも症状が出る場合には「不安定狭心症」という危険な状態に至っている可能性があり注意が必要です。

「心筋梗塞」は冠動脈が完全に詰まるなどして血流が途絶え、心筋が壊死してしまう病気です。
典型的には、胸の激しい痛みが20分以上続きます。
冷や汗呼吸困難吐き気意識消失などを伴い、命に関わる非常に重篤な病気です
時間が経つほど心筋が壊死してしまうため、発症時には一刻も早い救急搬送と専門的治療が欠かせません。
虚血性心疾患は日本人の死亡原因の上位に位置し、中高年だけでなく生活習慣病を抱える若い方でも起こり得ます。

高血圧症糖尿病脂質異常症、喫煙などは重要なリスク因子です。
胸の違和感は心臓からのSOSかもしれません。
「少し休めば治る」と放置せず、気になる症状があれば早めに循環器内科へご相談ください。

こんな症状に注意!心筋梗塞・狭心症のサイン

心筋梗塞・狭心症のサイン

最も多いとされる「労作性狭心症」の初期段階では、比較的に強めの運動を行ったときに症状が起こります。
具体的には、胸部を締め付けられる感覚や圧迫感、息切れなどの症状が出ますが、しばらく安静にしていると症状が治まります。
胸部だけでなく、左肩や上腕、顎にも痛みが広がったり、みぞおち付近に不快感を覚えたりする患者さまも少なくありません。
しかし、徐々に進行すると、軽めの運動(数百メートル程度の歩行など)でも胸部の痛みなどが出現します。
安静時に出現する場合にはより緊急度の高い「不安定狭心症」や「心筋梗塞」の可能性があり早急な対応を要します。

心筋梗塞になると、胸や背中の痛みが突然に出現したり、呼吸困難、冷や汗、意識消失などの症状が起こったりします。
なお、高齢者や糖尿病に罹患している患者さまの場合、痛みなどの症状が現れないことがあります。
なんとなく元気がない、突然に嘔気をもよおしたといったときは、念のため循環器内科を受診し、必要な検査を受けるようお勧めいたします。

なぜ起こるの?原因と危険因子

原因と危険因子イメージ

冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の主な原因は「動脈硬化」です。

動脈硬化では、血管の壁の内側にLDL(悪玉)コレステロールなどが溜まって「プラーク」というこぶができ、血管が硬く、狭くなってしまいます。このプラークが破れると、そこに血の塊(血栓)ができて血管を完全に詰まらせてしまうこともあります。
下記にあてはまる方は動脈硬化のリスクが高くなり、注意が必要です。

これらの危険因子は、日々の運動不足や乱れた食生活によって引き起こされたり、悪化したりします。また、慢性腎臓病も重要な危険因子です。
他にも、ご自身では変えられない要因として、年齢(加齢)性別(男性、閉経後の女性)、家族に若くして冠動脈疾患になった人がいる場合や、遺伝的にコレステロールが高くなる「家族性高コレステロール血症」といった遺伝的な要因も関わってきます。
これらの危険因子を正しく理解し、生活習慣の改善や適切な治療によってきちんとコントロールしていくことが、ご自身の心臓を守るために何よりも大切です。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の検査

虚血性心疾患の可能性が疑われる場合には、必要に応じて以下の検査を行います。

心電図検査
心臓が動くときの微弱な電気信号を記録します。
心筋梗塞の兆候や不整脈の有無など、心臓の基本的な健康状態を確認できます。
運動負荷をかけながら行う運動負荷心電図を行うこともあります。
心エコー検査(心臓の超音波検査)
超音波を使って、心臓の形や大きさ、壁の動き、弁の状態などをリアルタイムで観察します。
心臓のポンプ機能が正常に働いているかを確認する、とても大切な検査です。
血液検査
心臓にダメージが出ていないか、虚血性心疾患の原因となるような危険因子(脂質異常症、糖尿病など)がないかを調べます。

上記の検査結果を総合的に判断し、さらに詳しい検査が必要だと考えられる場合や緊急性が高いと考えられる場合には、地域の基幹病院などと密に連携をとり、以下のような精密検査をご案内します。

冠動脈CT検査
心臓の血管を3D画像で詳しく調べます。
比較的負担が少なく、血管がどのくらい狭くなっているかを詳細に評価できます。
心臓カテーテル検査
CT検査でも診断が難しい場合や、緊急性の高い場合等に行われます。
「カテーテル」という細い管を心臓の血管まで進め、血管の状態を観察します。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の治療

虚血性心疾患では以下の治療が行われます。

生活習慣の改善

全ての治療の土台となる最も重要な治療法です。
動脈硬化の進行を防ぐため、塩分や脂肪を控えた食事療法、ウォーキングなどの運動療法、そして禁煙を継続します。
これにより、原因となっている高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった危険因子を安定化し、動脈硬化の進行を抑制することを目指します。

薬物治療

生活習慣の改善と共に治療の中心となるのが薬物治療です。
心臓の負担を軽くする薬、血液をサラサラにして血栓を防ぐ薬、血圧やコレステロールを下げる薬などを状態に合わせて使用します。
症状を安定させ、心筋梗塞の発作を予防するために、毎日飲み続けることが非常に重要です。

非薬物治療(カテーテル治療・バイパス手術)

薬物治療で症状が改善しない場合や狭窄が重度な場合、緊急性の高い場合に検討します。
地域の基幹病院などと連携し、カテーテルで血管を広げる治療(PCI)や、心臓の血管に迂回路を作るバイパス手術(CABG)を行います。

予防と再発防止のポイント

予防と再発防止イメージ

虚血性心疾患の予防・再発防止には、毎日の生活習慣を整えることが欠かせません。
タバコは1日1本だけでもこの病気の発症リスクが1.65倍に高まりますが、禁煙を5年間続けると4~5割ほどリスクが下がると報告されており、早めの禁煙が大切です。
食事では、塩分のとりすぎや脂っこい食べ物、コレステロールの多い食品を控え、魚や野菜、海藻、大豆製品を意識してとりましょう。
お酒は控えめにすることも重要です。

運動は、少し息がはずむくらいの有酸素運動1日30分、週3回以上(可能なら毎日)続けるのが理想です。
難しい方は「今より10分多く歩く」ことから始めても大丈夫です。
エレベーターではなく階段を使うなど、日常の工夫が効果につながります。

また、高血圧症や糖尿病、コレステロール異常(脂質異常症)といった危険因子を放置せず、医師と一緒に管理しましょう。
薬は自己判断でやめず、定期的に診察を受けることが大切です。

一度発症した方には心臓リハビリテーションが再発防止に有効です。
運動療法や生活指導により体力・生活の質を高め、再入院の予防にも有効です。
日々の積み重ねが、心臓を守り、安心して過ごせる毎日につながります。